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『ALWAY 続・三丁目の夕日』 〜古きよき「昭和30年代」〜

西岸良平のロングセラー・コミックを映画化した「ALWAYS 三丁目の夕日」が公開されたのは2005年11月。東京タワーの建築が進む昭和33年の東京が舞台で、貧しくも夢と希望に満ち溢れていた市井の人々の悲喜劇を描いたこの作品は、多くの人々の琴線に触れ大ヒットした。

舞台は昭和34年

現在公開中の「ALWAYS 続・三丁目の夕日」はその続編で、東京タワーが完成した4ヶ月後の昭和34年春からが舞台。青森から集団就職で上京した六子が住み込みで働く小さな自動車修理・販売会社「鈴木オート」を営む鈴木則文、トモエ、一平の家族は相変わらず元気だ。

鈴木家と茶川に何が?

向かいで駄菓子屋を営みながら小説家を目指している茶川龍之介は、相変わらずうだつが上がらないままだが、結婚を約束しながら姿を消してしまったヒロミから預かった淳之介と2人、慎ましい中にも幸せな日々を送っていた。鈴木家に事業に失敗した親戚の子美加が預けられる。一平、淳之介と同級生になる美加だったが、つい最近まで裕福な暮らしをしていたので鈴木家での暮らしは貧しく、ガサツに映る。そして鈴木家に小さな波紋が――。一方の茶川家にも、淳之介の実父である裕福な川端が淳之介を無理矢理引き取ろうとする。果たして茶川は、そしてヒロミは――。

脇役が見どころ

鈴木家の波紋と芥川が抱え込んだ難題をメインにストーリーは展開するが、それを支える脇役がこの作品の魅力だ。六子と同郷で幼馴染みの武雄は日本一の料理人を目指して上京したが、六子と再会して心をときめかす。デートに誘いたいが勇気がない武雄を見かねたタバコ屋のおきんばあさんが恋の指南役をする。昔はこんなお節介ばあさんは何処にもいたものだ。則文や茶川の飲み仲間の肉屋と自転車屋も気のいい連中。茶川が淳之介を立派に育て、ヒロミを呼び寄せるには芥川賞を獲らせるしかないと、則文はじめみんなで涙ぐましい努力をする。

他人を思いやれた時代

自分の生活に余裕のある人間は誰もいないのに、困っている人間が周りにいると自分の置かれた状況を顧みず、手を差し伸べることが当たり前だった時代。そこには町医者もいるし、郵便配達員、警察官など様々な人が登場する。

舞台装置も多彩

本作で活躍する脇役は人だけでなく、時代を表わすファッション、風俗、建物、乗り物も大きな役割を果たしている。高速道路が架かっていない日本橋、オート三輪車ミゼット、超満員の映画館、自転車を三角乗りする坊ちゃん刈りの男の子、ベーゴマ遊び、アイスキャンデー屋――。どれもこれもが涙ものである。

敬称略